平成29年1月27日付で、国土交通省から「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」という文書が出されています。
※国土交通省資料:「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」
この文書の中で、「現状の課題」として、「別紙1の通り、発注者たる管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されています」と記載され、その実例が「別紙1」にあります。
別紙1は「<指摘されている事例>」と題され、3つの事例が紹介されています。それを簡単に整理すると次のようなものになります。
なぜ、このようなことが起こるかと言いますと、設計事務所の一部には建物の新築工事の際に、設計事務所と施工会社との間での旧態依然とした悪しき慣習を、マンションの大規模修繕の世界に引きずっているところがあります。
この悪しき慣習を業界では「チャンピオン制」と呼んでいます。設計事務所(コンサルタント)がチャンピオンと呼ばれる施工業者を選定し、その施工業者の社員が、設計事務所(コンサルタント)の職員に成りすまして、建物診断、改修の数量計算・仕様書作成などを行い、その成果を設計事務所(コンサルタント)に渡します。これを元に工事費用を積算しますが、設計事務所(コンサルタント)へのリベート(15~30%)を工事費の上乗せするので、工事費は当然高くなります。
さらに困ったことに、本来施工の出来不出来を検査すべき設計事務所(コンサルタント)が、施工会社に『おんぶにだっこ』なのですから、施工に不都合があっても、問題にはされず、工事は無事に終わったと管理組合に報告されます。
このチャンピオン制は、一言で行ってしまえば、「談合」というイメージでしょうか。あなたのマンションの大規模修繕工事が、不正な行為を働くコンサルタントや施工業者の談合の場にしてはいけないことは言うまでもありません。
このような設計事務所(コンサルタント)と施工業者の間の悪しき慣習、言い換えれば建設業界のブラックボックスがあるため、設計事務所(コンサルタント)の中には、たとえ一級建築士という難しい国家資格を持っていても、新築はわかるが改修や修繕がわからない、また、技術的なことは心得ているが、マンションの管理組合の運営などの知識が不足しており、工事についても十分に監理出来ない、あるいは、マンション居住者への配慮や管理組合の手続きなどの言わばソフト面での支援が出来ないという事態が発生します。
マンションの大規模修繕工事は、道路や橋などの土木構造物の修繕とも、また多くの企業が入居しているビジネスビルの改修とも違った難しさがあります。もちろん土木構造物やビジネスビルの改修も含めて、それぞれに合った技術が必要になることは言うまでもないことですが、マンションの場合は、工事の対象が居住の場であり、みなさんがいつもの生活をしている中での工事となりますので、他の改修工事と比べて何倍もの配慮が必要になってきます。